そして 君は 恋に落ちた。
“さよなら”、はおかしい。
私達は何も始まってなかったし。
じゃあ何?
“ありがとう”?
“またね”?
頭を駆けめぐる彼との1ヶ月間。
こみ上げる何かを必死に隅に追いやり、彼に笑顔を向けた。
「じゃあ、また明日」
……うん。
これがシンプルだわ。
彼の向こうに見える、不安げな彼女に軽く会釈して、私は彼に背を向けた。
一歩、足を前に出したはずなのに――――
「ダメだって言っただろ」
体は後ろに倒れた。
「―――っ なっ」
腕を後ろに引かれ背中にポスッと当たるのは彼の胸。
瞬間香った彼の匂いに頭がクラリとなる。
.