そして 君は 恋に落ちた。
「マジで腹立つ」
耳元でぼそりと聞こえた瞬間。
「……はっ、なに…?!」
私の手首を捕みそのまま反対方向へ歩き出した彼。
意味が分からない。
「松田君…っ」
彼を呼んだ私の視界に、驚き顔の彼女が横切る。
途端にどす黒い何かが私の中を駆けめぐり、彼の手を振り払った。
「もう終わりって言った!!」
―――痛い。
捕まれた手が、胸が。悲鳴をあげそうで。
叫んだ自分の声にまた、傷付き負けてしまいそうになる。
今にも零れ落ちそうな涙を無駄に我慢して、鼻と口に力を入れる。
睨みつけるように彼を見たら、思いの外表情崩さない彼に、逆に私が戸惑ってしまった。
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