そして 君は 恋に落ちた。
「―――もういい」
「え…?」
なに…?『もういい』って―――
戸惑う私を見て、
「もうあなたの気持ちなんかどうでもいい」
言って、私の手をさらに強く掴み歩き出した彼。
そう言い放った彼の真っ直ぐな瞳に、抗議の言葉がでない。
松田君に捕まれた手首のあまりの痛みにも何も言えず、もつれそうになる足を必死に動かした。
彼の言葉の意味が分からない。
彼女まで置き去りにして――――…
……そうして頭をよぎったのは、最後に見た彼女の不安げな表情。
彼女を傷つけたのは、紛れもなく私。
今、目の前のマンションに足を踏み入れようとしている私は、この瞬間も彼女を傷つけている…―――
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