そして 君は 恋に落ちた。
19





エレベーターの中、会話もなくただ無言を通す私。

松田君はそんな私を気にせず、ジッと黙ってエレベーターの行く先を見ていた。




機械音と共にエレベーターのドアが開くと、彼は私を見ることなくエレベーターを降りた。……私の手を引いて。


見覚えある廊下。

そして、彼は私の知ってる部屋で足を止めた。


さっきから一言も話さない。
沈黙に息詰まる私をよそに、彼はキーケースを取り出しそれを鍵穴に差し込んだ。

―――ガチャ


鍵の刺さる音がやけに響いて緊張がピークを迎える。
そして右に回す彼の手によって、鍵は開いた。




「どうぞ」


ドアを開け私を見てるであろう彼を、私は見返すことが出来ず。

松田君と彼女の家であろう部屋に、また足を踏み入れた。













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