そして 君は 恋に落ちた。



「あのさ、この間から思ってたんだけど……もしかして藤井さんと俺を疑ってるの?」


ゆっくり顔を上げると、彼は真剣な顔で私を見ていた。
それに目を合わせ小さく頷く。


「はぁー…
 何でそうなるの…」

私の額に当たるほどの溜め息を盛大に吐き出した彼に、慌てる私。


「……違うの…?」

「有り得ない」

「だって彼女このマンション出入り…」

「するよ。そりゃこのマンションの住人ですから」

「―――っ やっぱり…!」

「階数はこの部屋の二階下だけど」



―――――――な、に…?



私の顔がよほど間抜けだったのか、彼はプッと噴き出した。



「ちなみに、長年の片思いを実らせて、今は俺の同期の彼女です」


目を見開く私を今度は優しい笑みで見る彼。



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