そして 君は 恋に落ちた。


「今度彼氏も連れておいでよ。サービスしちゃうからさ」


“彼氏”の響きに慣れない私は「はぃ」と答えながら、顔の熱が上昇していくのを止められない。

そんな私を吉永さんは微笑ましく見てるようだ。



「…チッ」


「はい、舌打ちやめて下さい!」


私の前、瀬川君の隣に座る小林君は終始無言で。
私のにやけにわざと舌打ちする。

……本当、この人に『付き合おう』と言われたの幻だったんだ。きっと…



しばらくして吉永さんが奥から新しいワインを出してきた。

……すでに3本飲み干し、そろそろ帰ろうと思ってた。な、の、に―――


「これは、瀬川さんと小林さんからの祝いのワインなんだ」


私の表情で気付いたのか、笑顔で吉永さんが教えてくれた。

その言葉に私はさっきから様子のおかしい二人に目を向ける。



「………素直じゃないな」

ボソリ出た言葉に二人は同時に舌打ちした。


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