そして 君は 恋に落ちた。
「流石に2人きりだったら俺も許しませんけど」
声のボリュームが思いの外大きく、私の体は縮こまる。
「だから、“今回は”怒りません」
ハイ、とニッコリ笑ってサンドイッチを渡す彼。その笑顔を見た私は口元が引きつる。
……彼を怒らせてはいけない。絶対に……
「さ、もう出ないと遅刻ですよ」
ハッと気づいて時計を見ると、すでに針はいつもの時間より20分も過ぎていて。
「ごめ…っ 急いで着替えるから!」
「はいはい。片付けしときますね?」
クスクス笑い広げたサンドイッチの残骸や牛乳パックを買い物袋に入れる彼は、いつもの柔らかな空気を纏っていた。
……良かった。
機嫌直してくれた……んだよね…?
少し不安は拭えないけど。とりあえず、寝室のクローゼットに手をかけた。
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