そして 君は 恋に落ちた。
いや、君がいたら意味がない―――とはこの笑顔を前に言える勇気はなく。
「うん…」
と頬を赤らめ返す私はただの恋する女の子。
――――誰が想像できた?
こんな、地味で根暗でねじ曲がった性格の私に、こんな日々が訪れるなんて。
誰に、想像できた?
「エレベーターきましたよ」
背中を優しく押され開いたドアの中に入ると、この個室には私と彼だけで。
慣れたように彼の長く細い指が5階のボタンを押した。
しん…となる中エレベーターのドアがゆっくり閉まり、上に上がる振動を体に受けた瞬間―――
「キスしてもいいですか?」
……ダメ、でしょう。
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