そして 君は 恋に落ちた。
私が返事をするまもなく、彼は私の口にその温もりを落とす。
甘く痺れる刺激に、抵抗する事は出来なくて。
この瞬間も、全部、私の愛しい記憶に代わる―――…
「春日さん、これどうしますか?」
「見せて」
「これなんですけど……前に言ってたやり方だと、こうなっちゃうんです…」
カタカタカタカタ…
「ああ…、じゃあ―――」
キーをタッチする私の手の甲に、ペリと貼られたインデックス。
何だと見ると、彼の少し癖のある字で“今日はどちらの家にします?”と書かれていた。
カタカタカタカタ、カタ、カタカタカタ…
「はい、これならいいでしょ」
「ありがとうございます」
席を立つ私の後ろから、松田君のクスリと笑う声がした。
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