そして 君は 恋に落ちた。


「春日さん、少しいいですか?」



………ダメです。

なんて言えるはずもなく。


ゆっくり振り返ると、鷲色の瞳が私を見ていた。



「何かな?」


動揺に気付かれないよう笑顔で聞いた私を、彼は真顔で見下ろしたまま口を開かない。


……帰りたい。



松田君はしばらく私を見て、ゆっくりと口を開いた。



「お、ハルヒじゃん!

 帰る用意出来たな」


………が。私の後ろの人物に気づき、口を閉じた。



「ほら帰るぞ!

 それとも、なんか急用の仕事でもあんの?」


私と松田君を見て不思議そうな顔の瀬川君に、慌ててエレベーターの中に入った。


「何もないよ。

 松田君またね。お疲れ様」

「あ、」と一歩近付く彼に手を振り急いでエレベーター内の“閉”ボタンを押す。


エレベーターはドアを閉め、ゆっくり1階まで下りていった。

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