そして 君は 恋に落ちた。
「明日それ着てこいよ」
ショップバックを両肩にぶら下げ歩く私の先を歩きながらニヤニヤする彼に、軽く苛つく。
「……買いすぎでしょ」
「半分出してやったんだから文句言うな」
……確かに出してくれた。
それでも、完全に予算オーバーよ?
「夕飯はハルヒの奢りな?」
「は?! なんで!」
「買い物付き合ってやったんだから当たり前だろ?」
呆れた顔で私を見下ろすこの男をどうしてくれよう!!
私が彼を睨みつけるのと同時に、彼は私の後ろを見て「あ、」と声を出した。
私はそれにつられるように振り向く。
「――松田君」
人混みの中、毎日見ている彼が歩いていた。
私達には気付かない彼は、会社で見る柔らかな表情ではなくて。
昨日見た、男の顔をしていた。
途端に下腹部がキュッとする。
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