そして 君は 恋に落ちた。


「仲良いですね、お二人」


瀬川君の後ろ姿に呪いをかけていると、松田君が少し大きな声で言ってきた。

私は慌ててシッと口に人差し指を当てる。


「仲良いって言うか、同期だから。松田君も同期は特別じゃない?」

周りに気を使いながら小さく聞くと、彼は一瞬考えて口を開いた。


「確かに同期は違いますね」

「でしょ?
 友達みたいなものよ」

「友達ですか」

「そう。友達。
 異性を感じない友達」


うんうんと納得して、最後の一口を口に運ぶ。



「御馳走様でした」

いつものように両手を合わせお盆に手をかけた。


「じゃあ、先に行くわね」

松田君に伝えると、彼もちょうど食べ終わって立ち上がった。



正直逃げるように立ち上がった私の心は『ウソ!』と叫んでる。が、口には出せず一緒に食堂を出るしかない。

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