そして 君は 恋に落ちた。
―――1回ぐらいじゃ色気は出ないって事っ?!
小林君に聞きに行きたい衝動を抑えドアの前にいると5階に着いた。
エレベーターのドアがゆっくり開き私が一歩足を踏み出した瞬間―――
「―――っ」
腕を強く引かれ後ろに倒れ込んだ。
目の前には経理部のフロア。
ゆっくりドアが閉まっていき……
「先輩、少し時間下さい」
吐息混じりの声に私の下腹部がキュッとなる。
私の横から腕が伸び、細く長い指が7階のボタンを押した。
7階は会議室と応接室がある、普段使われないフロア。
松田君が何故私をそこに連れていくのか考えても、背中の彼の気配に思考は働かない。
私はただ、俯いて立っているのがやっとで。
彼は私の左腕を掴んだまま放してはくれない。
5階から7階までアッという間で、到着音と同時にドアが開いた。
.