そして 君は 恋に落ちた。


「松田君、もう時間が…」



昼休憩終了まであと10分を切っていた。


私の言葉を完全に無視し彼は前をスタスタ歩く。

私の手を掴んだまま。




「入って下さい」

「えっ ここって…」

「今日はこの部屋使われません。もう時間無いんで、早く」



そう言って少し強引に腕を引かれ、急かされるまま入った部屋は、小会議室。


鍵もかける必要無いくらいに忘れ去られてる場所で。私用目的で入るのは戸惑われ、居づらい。

そんな私に気づいたのか、彼は少し強引に手を引きそのままドアの前に立ち鍵をかける。




「松田君…?」


彼と二年共に仕事をしてきたけど、こんな行動をする人じゃない。

ましてや、笑顔もなく強引にこんな場所に連れてくるなんて……



私の戸惑いに気づいてないのか、彼は真顔で私を見下ろした。


その目線に、途端に固まる体。

< 58 / 378 >

この作品をシェア

pagetop