そして 君は 恋に落ちた。








仕事がデキるスキルは今日ばかりは必要なかったんだけど。


就業時間が終わり、すでに残業時間に切り替わって一時間。

私のデスクは綺麗に片づいてしまった。



「……行くか…」


彼のデスクは綺麗さっぱい片づいていて。就業時間終了と共に席を立ち、爽やかな笑顔を振りまきながら立ち去っていった。

私と目を合わせることなく……。




「――逃げたいな…」


買ったばかりの白のバックを肩に掛け、ギリギリまで回避できないか思案するけど……さっき届いた彼からのメールを思い出し、深く息を吸うと覚悟を決めた。




メールの内容は、


“待ってます”




「……最悪だぁ…」


エレベーターに入った瞬間、出た言葉。


私の呟きは中で反響して消えた。

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