そして 君は 恋に落ちた。


「もう…なんで瀬川君まで……
 わ、私、何かしちゃった…?」





彼を傷つけるつもりなんて、なかった。


利用したくせに、まだそんな綺麗事が頭に浮かぶ自分に、腹が立つ。





利用したの。


『チャラチャラしてバカみたい』

『私はあの子達みたいには絶対ならない。男なんていらない』

『良い大学出て責任ある仕事をするためには、男なんて―――』



そう言い訳して、今まで何の努力もしなかった自分の、30歳になる焦りのために。

“女のプライド”のために、彼を利用したの。




何の事情も知らないはずの瀬川君に、何故か責められてるような気がして涙を流す私は………身勝手以外の何者でもなくて。



「ハルヒ……お前、もしかして…」

「ヒック…も、無理……」



私を掴む手が緩んだ。

それと同時に、瀬川君は何かを言いたそうな。でも、喉がつかえて言葉が出てこない、そんな表情をしていた。

< 90 / 378 >

この作品をシェア

pagetop