そして 君は 恋に落ちた。
「もう…なんで瀬川君まで……
わ、私、何かしちゃった…?」
彼を傷つけるつもりなんて、なかった。
利用したくせに、まだそんな綺麗事が頭に浮かぶ自分に、腹が立つ。
利用したの。
『チャラチャラしてバカみたい』
『私はあの子達みたいには絶対ならない。男なんていらない』
『良い大学出て責任ある仕事をするためには、男なんて―――』
そう言い訳して、今まで何の努力もしなかった自分の、30歳になる焦りのために。
“女のプライド”のために、彼を利用したの。
何の事情も知らないはずの瀬川君に、何故か責められてるような気がして涙を流す私は………身勝手以外の何者でもなくて。
「ハルヒ……お前、もしかして…」
「ヒック…も、無理……」
私を掴む手が緩んだ。
それと同時に、瀬川君は何かを言いたそうな。でも、喉がつかえて言葉が出てこない、そんな表情をしていた。
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