梅林賀琉
浦島太郎の巻
世の中もずいぶんと変わってしまったものだ。
最近、おかしなニュースが続いている。
たとえば、妄想島のみかんを食べると不老不死になれるだとか……三日月山のふもとにあるアスレチックらんどのすべり台が大江戸万歳級だとか……となり町の竹やぶで本物のかぐや姫に遭遇した老爺がいるなどである。
まったく、このような例を次々と挙げていったのではキリがない。
これを世間では「おとぎ化」と呼んでいる。
もっとも、ここ梅里市では浦島太郎の生まれ変わりということになっているぼくが住んでいるのだが……。
まだ世間にそのことは広まっていないようだ。否、これからも広まることはあるまい。
別にそれが証明できるわけでもなんでもないが、ぼくの中でただそんな気がするのであった。
ぼくの本名はもちろん、浦島太郎ではない。梅林孝哉というれっきとした本名がある。
ここ一帯は梅の木を栽培している農家が密集していて、ぼくの先祖は代々ここの土地を持っている自作農である。したがって、梅林という名もそこからきているのだ。
それから、下の名前「孝哉」はよく「たかや」と呼び間違えられるが……。正しくは「たかちか」である。
まぁ、そんなことはいいとして、ここからはぼくが浦島太郎と名乗るきっかけとなった不可思議な出来事を紹介していこうと思う。

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