あさきゆめみし
その言葉を聞いた次の瞬間、私は彼の香りに包まれ、同時に腹部への鈍い痛み。
気がつくと目の前には真っ黒い床が広がっていた。
この部屋にも火が回ってきてしまったのか、熱風が押し寄せてくる。
瞬時に状況を理解した私は、早く逃げるんだ。と自分に言い聞かせるも、体が自由に動かない。
熱い空気の中、薬指にはまった指輪だけが異常な冷たさを持っていて、
その冷たさが伝わってきたかのように、一瞬身体が冷えた。
「イオ…っ。」
呟いても、もうここには誰もいない。
耳障りな非常ベルの音が鳴り響いて、頭の中まで浸食してきていた。