あたしだけのものだから
いち。
彼氏がほしい
「あーつーいー!!」
8月、夏真っ盛りのとある日に響いたのはあたし、早川悠里(ハヤカワユウリ)のだらしない声。
「うるさいな、余計暑くなる。」
そんなあたしの隣で冷たく言い放つのは、親友の米岡美智(ヨネオカミサト)。
せっかくの高校生になって初めての夏休みなのに、さっきから意味もなく街をぶらぶらして、暑い暑いと叫んでいる私たちを見たら、大抵の人が「部屋でクーラーかけてごろごろしてろよ」と思うかも知れないが、そういう訳にもいかないのである。
そう、今年の夏こそは。
「絶対彼氏作るぞー!」
「…悠里うるさい」
「じゃあ美智は彼氏できなくていいの?」
「………ほしい」
「そうでしょうそうでしょう」
「…でも正直私は、ぶらぶらしてるだけじゃ男はよって来ないし、声すらかけて来ないと思うよ」
うん、あたしもそれは思う。
「ああもうじゃあどうすればいいのよ!」
「さあ」
相変わらず冷たい親友と、みんな彼氏というものをどうやって作ってるんだろうという疑問に、あたしは大きなため息をついた。