あたしだけのものだから
彼
「あ………」
あまりの美しさに目を奪われ、3秒程フリーズしたあたし。
「え、っと…、」
大丈夫ですか?と少し首を傾げながら聞いてくる彼。
………かわいい。
「あの、えっと本、どうぞ。いや、どうぞって変か。まあ俺のこと気にしなくていいんで」
少しはにかみながらあたしに本を渡す彼。
………かわいい。
じゃなくて!
「そんな、悪いですよ!先どうぞ!」
あたしは慌てて彼に本を突き返す。
「いや、ほんといいんで」
また彼は微笑んで、少し御辞儀をすると立ち去ろうとした。
「ま、待ってください!」
あたしはとっさにそう言っていた。
彼にもう会えなくなるのが嫌だったからなのか、いきなりの美少年登場でテンションが上がったからなのか、それはわからない。(多分後者)
「え」
少し驚いた様子で振り向いた彼に、あたしは
「1日!1日でこの本読んで来るんで!明日、また図書館に返しに来ます!だからその、明日また…」
そこまで言ってちらっと彼を見る。
驚いて目を丸くしている彼を見て、あたしは心のそこから「やっちゃった…」と思った。
「あ、あたしなに言ってんだろ、ごめんなさい」
そう言ってもう一度彼を見ると、彼は必死で笑いをこらえながら
「面白い人だな、わかりました、明日…14時でいいですか?」
そう言った。
私は大きく頷くと、ありがとうございます!と言って急いで美智の所に言った。
「変わった人だな」
そういいながらまた彼が笑ったことは、私は知らなかった。