トリガーポイント

2年前

2年前。
あれは私が埼玉に帰る3日前。

大学の同級生や後輩達が私の送別会を開いてくれて、ちょうどその帰り道で携帯が鳴った。

…「もしも~し。」

『亜優ちゃん。』

「須賀さん。
どうしたんですか?」
『今どこ?
これから出て来れる?』

「えっと。大丈夫ですよ。
今千秋公園です。
さっきまで飲んでたんですけど、今は皆と別れて1人です…」

『実は今さ、店に大和いるんだけど、ちょっと荒れてて…。』

「すぐ行きます。」

大和くんが荒れてる…?
私はいてもたってもいられずに須賀さんのお店まで走った。


その年は珍しく道路にはまだ雪が残っていた。
風は痛いくらいに冷たかったけど、そんな事を気にしてる余裕はなかった…。


「須賀さんっ。」

お店のドアを開け店内を見回すとカウンターに大和くんが突っ伏していた。

「亜優?」

大和くんが私の声を聞いて微かに反応する。
大和くんの近くへ寄ると右手が血だらけだった…。

「大和くん。右手どうしたの?」

泣きそうになる自分を押さえて大和くんの右手の血を拭いた。

「大和の手はあれが原因。」

須賀さんが店内のインテリアで飾ってあった鏡を指差した。

鏡は血が付いていて、粉々に割れていた。
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