トリガーポイント

進展

「えりりん。
そろそろ帰ります。」

「これ持って帰ってよね。」

えりりんは爆睡モードに入った大和くんを指さして言った。

「了解です。」

「それよりあんた、おばあさんの具合はどうなのよ?」

カウンターから身を乗り出してきてえりりんがこっそり私に尋ねる。

「ん~…。
やっぱり、良くはないですね。
最近、味覚に障害が出始めてきてるし、何より忘れる感覚が狭くなってきました。」

「大和には言ったの?」

私は首を横に振る。

「大変になってくるのはこれからだから…。」

ばぁの病状が確実に進行しているのが分かった。

それは料理の味付けだったり、
体調不良だったり、
ちょっとした事だったけど、
それに気がつく度私は怖くて不安でたまらなかった。

だから、強がる事しか出来なかった。

周りにも自分にも大丈夫だと暗示をかけるしかなかった…。

自分が崩れてしまわないように…。

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