トリガーポイント
「抱えこまないようにしなさいよ。」
タクシーに乗る私の背中に向かってえりりんは言った。
私は何も答えずに手を振った。
それから数日後…。
昼間ばぁと一緒に近所に買い物に行った時に小さな事件が起こった…。
「ばぁ。お昼はお蕎麦にしようか。」
そうばぁに言うと、ばぁはしばし考え込み、
「今日は蕎麦でなくて、あれ…。あの細くてあのあれが食べたい。」
と言った。
「そう麺?それとも稲庭うどん?」
「そう。うどんがいいね~。」
ばぁは大して気にしていないようだったけど、
物の名前が出なくなってきている…。
更には、レジで会計を済ませてお店を出た時、ばぁは明らかに家に帰る方向と違う道に進み出してしまった…。
「あれ。ばぁ、まだどこかに寄る用事でもあった?」
「いんや。家に帰んだよ。」
そう言いながらも明らかに逆方向を進むばぁ。
ばぁの気持ちを損ねないように、近道だと言いながら道を戻して帰宅したが、その帰り道の会話もつじつまが合わない話ばかりだった。
もう亡くなってしまった兄弟がさも生きているように話をしたり、私に、大学何年生になったのかと聞いたりもした…。
私は、病院で働いていた時に先輩の保健師さんが言っていた言葉を思い出した…。
タクシーに乗る私の背中に向かってえりりんは言った。
私は何も答えずに手を振った。
それから数日後…。
昼間ばぁと一緒に近所に買い物に行った時に小さな事件が起こった…。
「ばぁ。お昼はお蕎麦にしようか。」
そうばぁに言うと、ばぁはしばし考え込み、
「今日は蕎麦でなくて、あれ…。あの細くてあのあれが食べたい。」
と言った。
「そう麺?それとも稲庭うどん?」
「そう。うどんがいいね~。」
ばぁは大して気にしていないようだったけど、
物の名前が出なくなってきている…。
更には、レジで会計を済ませてお店を出た時、ばぁは明らかに家に帰る方向と違う道に進み出してしまった…。
「あれ。ばぁ、まだどこかに寄る用事でもあった?」
「いんや。家に帰んだよ。」
そう言いながらも明らかに逆方向を進むばぁ。
ばぁの気持ちを損ねないように、近道だと言いながら道を戻して帰宅したが、その帰り道の会話もつじつまが合わない話ばかりだった。
もう亡くなってしまった兄弟がさも生きているように話をしたり、私に、大学何年生になったのかと聞いたりもした…。
私は、病院で働いていた時に先輩の保健師さんが言っていた言葉を思い出した…。