トリガーポイント
私のことをアユ太郎と呼ぶ人は1人しかないなかった。

「泰治(たいじ)さん!?」

サングラスとテンガロを外して、泰治さんが私に近付いてきた。

「アユ太郎。
会いたかったぞぉ~。」

私は泰治さんにぎゅ~っと抱き締められた。
「た、泰治さん。
苦ひぃ…。」

泰治さんに、あまりにも強くハグされ、私は呼吸困難に陥りそうになってしまった。

「あっ。
すまん、すまん。
それより、アユ太郎よ。
こっち来てたなら連絡せぇよ~。」

今度はハグの変わりに、わしわしと頭を撫でられた。

「泰治さんっ!
髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃうよ!!」

「すまん、すまん。」

「絶対に悪いと思ってないでしょ~?
もぉ~…。」

私は手櫛で髪の毛を直す。

泰治さんは大学の頃の先輩で、ちょっと変わった人。

あの頃からこのオーバーな愛情表現は変わらない。
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