トリガーポイント
「おぉ~怖っ。
なんか今日の大和は機嫌悪いわね~。」

えりりんは冷やかすように言ったが、
確かに大和くんは機嫌が悪いように見えた。

何か、あったのかな…。

私は気まずい雰囲気を抜け出したくて、
えりりんにタクシーをお願いした。

「大和くん…。
まだ…飲んでく?」

眉間に皺を寄せながら、ひたすら飲み続ける大和くんに、私は声を掛けた。

「いや。帰るよ。」

そう言った大和くんは、
先程とは違って落ち着きと、いつもの穏やかさを取り戻しつつあった。


「泰治さん。
今日はありがとうございました。
なんだか、せっかく誘ってもらったのにすみませんでした。」

私は泰治さんにそう声を掛けると、
泰治さんはいつものように、私の頭をわしわしと撫で、

「気にすんな。
また誘うからよ。
今度はあのガードの固い従兄弟殿は抜きでな。」

「えっ?」

泰治さん何を言ってるんだろ…?

「亜優っ!
タクシー来たぞ。」

そんな私たちの会話を遮るように、大和くんの声がお店の入口から響く。



< 25 / 32 >

この作品をシェア

pagetop