私が死んだら、1つの命が助かった。
いろいろな検査をして戻った時、母さんは不安そうに医者と俺を交互に見ていた。
「………あの、先生…」
「異常はありませんでした………」
一瞬ホッとしたような顔をしながらすぐに苦痛にゆがんだ顔を俺に向けた。
「………っ…」
「………なぁ、ヒヨリは?」
ビクッと体が震えたのは、医者もだった。
何となく、
嫌な予感がした。
「………何なんだよ」
口調を荒げると、医者は俯かせていた顔をあげて涙の溜まった目で俺を見た。