私が死んだら、1つの命が助かった。
………
「とぼけたこと言ってんじゃねぇぞ」
「事実だ」
医者は拳を握りしめてその手を見つめた。
だって、俺の方が………
「………君は車に衝突したが、ヒヨリさんもガードレールにぶつかった。
君は臓器の肝臓が酷くえぐれていた。
ヒヨリさんは、臓器と言っても肺だけだった。
ただ、肋骨が折れて肺に刺さり、危ない状態だった。
………君は………………」
医者は目をギュッと瞑って奥歯をかみしめた。
「………っ、ヒヨリさんの、臓器を貰ったんだ……」
体が心臓になったみたいに、身体に心音が鳴り響いた。