私が死んだら、1つの命が助かった。
「………不思議な感覚なの。
私は死んだのに、幸せなの。」
その言葉に俯いていた俺は顔を上げた。
そこには、優しい笑みを浮かべたヒヨリの顔。
「………私が死んだら、1つの命が助かった。
そう思うと、嬉しくて悲しくて………
幸せなの」
ヒヨリは一粒の涙を流して俺の手を握る力を強めた。
「私の一部を生きさせて。
慶一と共に、生かせてあげて。」
そう言ったヒヨリは
今までで1番綺麗で儚気だった。
「………じゃぁね、慶一」
「待て………俺は…‼」
俺の口を人差し指で押さえたヒヨリの右半身はどんどん霞んでいく。
「言っちゃダメ。
私も、言いたくなるから」
「ヒヨリ‼」
叫んだ時には、ヒヨリの姿は跡形もなかった。