私が死んだら、1つの命が助かった。
「京介」
「おはよーさん」
私と慶一の肩に片腕ずつのっけて気怠そうに歩く京介。
京介は、慶一がまず仲良くなって、私とも仲良くなった男だ。
「おはよ」
「はよ」
慶一はウザそうに京介を見ながらちゃっかり挨拶を返す。
何だかんだで、親友と名乗り合う2人は仲が良い。
「慶一くんはシャイですねぇー」
「うるせぇ、タラシ」
「それとこれとは別ですぅー」
語尾を伸ばすのがクセの京介は、女ったらしだ。
多分、性活をいつまでもしている気がする。
「疲れないの?毎日ヤってて」
私がそんな質問をすると、京介は決まってこう言う。
「疲れより快楽が優先だろ?」
うん、最低だと思う。
「女をそんな風に扱わないでよ」
「はぁ~、ヒヨリはわかってないなっ!」
京介を訝しげに見ると、京介はニッと笑いながら
「人間とはそう言うモノだ!」
と言った。
その瞬間肩に乗っけられている腕をはたき落としてスタスタと1人、下駄箱に歩き出す。
「おい、お前ってヤツは…」
「童貞クンは黙っててください」
「………うるせぇよ、クソやろ」
「まぁったく、ヤる時になったら、上手い方がいいんだぞ?
なんなら、俺が誰か紹介してやろうか?」
「いらん」
慶一は溜息を吐いて京介から視線を外した。
「………気持ちは、言わなきゃ伝わんねぇぞ」
「知ってる」
「もー、慶一くんはシャイで童貞でチキンなんですかー」
「うるせぇ」
イラっとした慶一は京介の腕を振り下ろしてスタスタとヒヨリを追って校舎に向かった。
「………素直じゃないねぇ。」
眉を下げて肩を落とす京介は心底呆れた様に息を漏らした。