私が死んだら、1つの命が助かった。
大通りの方は車の通りが激しいし、歩道が狭いから危ない。
慶一はさりげに道路側について私の隣を歩いて行く。
………無駄に、私に気を遣う。
「そういうの、いいよ」
「は?」
「そういうの、いらない。」
「まて、主語がない」
「………気遣いとか、私には要らない。」
その言葉に目をパチパチと数回繰り返す慶一。
「………あのなぁ。
男は女を守るのが普通なの」
「私とあんたに女も男も無いでしょう」
そう言うと、慶一は黙って顔を逸らした。
その隙にぐっと慶一を内側にいかせて、私が道路側に立つ。
「おい、こら」
「だからっ、そういうのいいって!」
「だからなー……」
もみくちゃしあってると、騒ぎながらこっちに向かってくるランドセルを背負った子達がたくさん来た。
でも、それを気にせず討論しあってた。
「私、いっつも慶一にまもられてる!」
「別に守ろうとして守ってる訳じゃ…」
「じゃぁ何よ?」
「………人間の本能だよ!」
「あんたが本能とか言うな!」
「なーー「おい、ボールとって空き地で遊ぼうぜ!」
子供の大きな声が聞こえた時、私の体が大きく押された。
その拍子に慶一も私と共に押される。
どこか、冷静な自分が居た。
車が自分たちに突っ込んでくるのを見て。
慶一は私を抱きしめてその車から遠ざけようとした。
でも、ぶつかった拍子にガードレールにぶち当たることは目に見えていた。
ただ、痛みの衝撃に備えた。
………慶一の服を、思いっきりつかみながら。
私の体を鋭い痛みがかけた後、すぐに思考は止まってしまった。