私が死んだら、1つの命が助かった。
ーーーーー
真っ白な世界から少しずつ体の痛みが脳に伝わってきて覚醒させる。
「うぅ………」
「起きたっ………何で…」
薄く目を開けると、ドラマでよく見る手術の格好をした人。
「………お、医者さ…」
「話さないで!
骨が深く刺さってしまう!」
あぁ、どうやら肋骨が肺に刺さったみたいだ。
そんな状況に涙は零れなかった。
「よ、し………」
「話すなって!」
「慶一は………?」
「慶一…あの子は………」
口をもごもごとさせる医者の衣服を引っ張って自分に近づけさせる。
「っ、私より、慶一の方が助かる可能性高いでしょう?」
そう言うと、医者は目を見開いて悲痛そうに眉を下げた。
「………、慶一くんは…肝臓をやられてる。
もう、ムリだよ」
医者の言葉に強く衣服を握った。
「………、私の、あげて」
そう言うと医者は目を見開いて口を大きく開けた。
「黙れ‼もう喋るんじゃない‼」
「あげて………慶一に、あげて‼」
「バカか、君は…他人なんかの臓器を…」
「………ーーーーー」
医者は私の言葉に目を見開いた。
その後悲痛そうに唇を噛んで私のスクバから1つのカードを出した。
そのカードは、
臓器提供意思表示カード。
「………いいのか?」
「………、はい」
「………僕も、クビかな」
医者は悲しそうに言いながら私の体に麻酔を打った。
最後に見た医者の顔は
涙に濡れていた。