潔癖症の彼は、キスができるのですか?
残されたふたり。ぐずぐず泣く私に、大窪くんは優しく頭を撫でてくれる。
「さ、触らないで。頭も泥まみれだから。たくさんバイ菌ついてるよ……」
「そんなに気になるなら、アンパンマンになって、バイキンマンやっつけようか?」
「…………」
へ?
「アーンパンチ」
ぽかんと口をあける私のこめかみに、かるく拳をあててくる大窪くん。
「あ、アンパンチされたら、バイバイキンって山口さんが飛んでっちゃうから、メロンパンナちゃんになる」
「メロッ……?」
「メロメロパーンチ」
また同じ箇所を優しく拳で触れられる。
「バイキンマンをやっつけたついでに、俺にメロメロになってくれたら嬉しいんだけど」
「…………プッ」
も、もう大窪くんって。
「アンパンマン詳しすぎ!」
「年の離れた弟がいるから、よくアンパンマンごっこしてるんだ。俺、バイキンマン役ばっかりだけどね」
このやりとりで、涙は簡単に止まった。逆にお腹が痛くなるほど、笑うことができた。
大窪くん。
私、やっぱり、あなたが好きです。
メロメロパンチされなくても、すでにもう、メロメロだよ……。