潔癖症の彼は、キスができるのですか?



「……そうだな。相手にも話を聞いてみないと……。理由に心当たりはあるのかい?」


心当たり? 大窪くんの前で、大窪くんのことでだなんて言えない。絶対に自分を責めるから。


それに、この人たちに何を言っても無駄だと思った。うちの学校は陸上部の強豪校。いじめなんて、不祥事が発覚したら、大会に出られなくなるかもしれない。


結局は、私より、学校の体裁が大事なんだ……。


「いじめの加害者の話を聞く必要なんて、あるんでしょうか?」


え?


ずっと無表情で聞いていた大窪くんが、ゆっくりと口を開いた。


「どんな理由であれ、いじめた側が悪いに決まっているでしょう。学校側がなんらかの処分をしないなら、今日山口さんを病院に連れていって、医師の診断書を書いてもらって警察に被害届を出します」

「お、大窪! お前、何を言ってるんだ!」


担任は声を荒げるけど、大窪くんは全く怯まない。冷静な態度で校長を見た。


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