潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「教育委員会に話したところで、学校側の調査ではいじめの事実はなかったと報告されるのがオチ。それなら警察しかないでしょう。受理されたら、マスコミがニュースとして取り上げるでしょうね」
「……」
校長は黙ったまま。担任はさっきよりも顔色が悪くなっている。この緊迫した空気の中、私は何も言えなくて、ただ、見守ることしかできなかった。
「3対1ですよ? 震えて泣いていたんですよ。彼女の顔のアザを見れば一目瞭然でしょう。今回の件、黙認されるのですか?」
「……黙認はしない。君の言う通り、いじめはいじめだ。だが、公正に、相手側からも事情を聞く必要はある」
「相手側の本音と嘘を見極めてくださいよ。ここで、お咎めなしと判断したら……いじめは続きます。負の連鎖を立ちきるためにも正しい判断をされることを期待しています」
「分かった。これから職員会議を開く。ふたりは、教室に戻りなさい。山口さん、後でまた詳しく事情を聞かせてもらえるかな」
「はい……」
私と大窪くんは校長に頭を下げて、校長室を出た。