潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「……大丈夫?」
「何が?」
「だって、大窪くん……」
繋いだ手から伝わる。
手が震えてる。
「怒りをおさえるのに必死なんだ。俺、本当はあいつらを殺したいくらい憎い」
「こ、殺したいって……! そんなこと考えちゃダメだよ。やりすぎだよ!」
そりゃ悔しかったし、私もやり返してやるって思ったけど、殺意までは芽生えなかった。
「それくらい俺は山口さんのことが、好きなんだね」
「……」
「好きって感情は、人を狂わせるね。初めて知った」
「大窪くん……」
不謹慎だけど、嬉しい。私、こんなに思われて幸せだ。
「初恋は実らないって言うけど、本当だね」
「え?」
いきなり、何を言い出すの?
大窪くんはゆっくりと私の手を離すと、誰もいない廊下の階段の二段目で足を止めて、振り返る。