潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「じゃ、またね」
「うん、送ってくれてありがとう」
お互い見送りたい私たち。でも、これは私がひかなかった。毎日、大窪くんの姿が見えなくなるまで、見送る。一日の終わり。大窪くんの後ろ姿を見られて幸せ……。だけど……。
「……今日も手、繋げなかった」
車道側を歩いてくれる大窪くんの隣で、わざと大窪くん側のほうに鞄を持つから手を繋ぐことは不可能なんだけど。でもきっと、大窪くんは気づいてる。私が恥ずかしがって、手を繋げないようにガードしてること。
ああ~もどかしい‼ キスまでしていて、なんで手も繋げないんだ‼ 本当は繋ぎたいのに‼
ひとり道端で、はあーと、大きなため息ついていると。
「こいつが山口琴音だよ」
「へ?」
突然、背後から女の子に名前を呼ばれて振り返る。そして私は思いっきり顔をしかめた。
「げっ」
私にトイレの水をぶっかけて、一週間の自宅謹慎になった陸上部のケバマツゲ! と、隣には、他校の制服を着たアッシュ系のキレイな髪色をした男の子が立っていた。