潔癖症の彼は、キスができるのですか?
私の机の上に、大窪くんのノートを置かれる。ゆううつ……。憂鬱なんて、おバカな私が書けるわけない。
「だから、手が痛くてペンが握れないくらい力が入らないの。手が治ったら、憂鬱って漢字、書いてみせるよ!」
「俺から見たら、山口さんが憂鬱な表情に見えるけど」
え?
「帰ろう。右手がダメでも、左手なら大丈夫だよね」
そう言って、私の左手に大窪くんが触れた瞬間。
――パシン‼
思わず、大窪くんの手を振り払ってしまった。私の行動に驚く大窪くん。私は罪悪感で胸が痛くて、窒息しそうになる……。やばい。泣きそう。でも、唇をグッと噛みしめて、我慢した。
「ごめん。あの、来週から手は繋ぎたいです」
「なんで? 理由は?」
「理由は」
「納得できる理由じゃなきゃ、帰さないよ」
いつの間にか、教室には誰もいなくなっていて。大窪くんの顔が真剣で、緊張してきた。