潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「今朝から様子がおかしかったし」
うっ! 今朝から気付かれてたのか。
「隠し事とか傷つく。俺、山口さんの彼氏なのに」
分かってる。私だって、何でも話したいし、どんな些細なことでも話してほしいよ。でも、今回のことは、言いたくない……。
「何でもないよ。考えすぎー」
「嘘下手だって、自覚ある?」
目が笑ってない。お、大窪くん。もしかして、怒ってる? 私は苦笑いしながら、ゆっくり後退りする。ここは、いつもの走って逃げる選択肢しかない。
「逃げるのもなし」
「え?」
後退りした先の壁に背中がつくと。
――ドン‼
大窪くんは私の顔の横に、右手を荒々しく置いた。こっ、これって……‼
漫画とか小説でよくある壁ドンってやつですか‼?
やややややばい! ピンチな状態なのに、憧れのシチュエーションに鼻血が出そう。
「山口さん、聞いてる?」
「……」
大窪くんは、壁から手を離すと、ハンカチで手を拭う。ああ、やっぱり壁にも触れたくなかったんだね。なんか、一気に現実に戻った。