潔癖症の彼は、キスができるのですか?



「お、大窪くん、何やってるの⁉」


想像以上に痛かったのか、足がふらついている。私は慌てて大窪くんの腕を組んで、体を支えた。


「……俺、バカだ」

「大窪くんはバカじゃない。頭いいよ! テストで赤点とってる私のほうがバカだよ!」

「いや、そういう意味じゃなくて」


プッと吹き出す大窪くん。今日、初めて大窪くんの笑った顔を見れた。


「それより、頭大丈夫⁉」

「大丈夫じゃない。気持ち悪い。早く帰ってシャワー浴びたい」


応急処置と言って、鞄から赤ちゃんの肌にも使えると書いてある除菌シートを取り出して、ポストに触れたであろう額を拭きはじめた。


……あの、そっちの意味の大丈夫じゃなくてですね? 頭だよ? 前回もMRIを撮ったほうがいいと言われるくらいの怪我をしているのに……!



「山口さんに見透かされて、気を遣わせて。何が山口さんの身に起こっているのか分からないもどかしさから、嫌なこと言った。謝るのは俺のほうだよ。ごめん」

「そんな……大窪くんは謝らないでよ。意地はって、何も言わない私が悪いんだから」

「ううん。それだけじゃなくて。ヤキモチのほうが大きいから」


ヤ、ヤキモチ?



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