潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「何? こんなとこで話してる暇があるなら、家に帰って元凶になったものを、証拠隠滅したほうがいいんじゃない?」
「……なるほどね~。先の先まで考えて、俺がそう動くしかないように追い詰めたってことか。頭きれるね。これ、彼氏の入れ知恵?」
「なんのことだよ? 今回の件は、山口さんから何も聞いてない。俺はただ、見てただけだよ」
「……! じゃ、琴音ちゃんに触れたら助けてってお願いしてるって言ったのは、嘘?」
「お願いはしてないけど、大窪くんならきっと助けてた。だから、半分は嘘じゃない」
私がそこまで言うと、夏樹はため息をついてまたベンチに腰掛けた。
「明日までが期限だから。夏樹くんの行動次第で、私も動くよ」
「……本当に頭がゆるくて、弱い子だと思ったのに。意外すぎてビックリしてるよ」
私は夏樹を見下ろして、ベッと舌を出す。
「"見た目に騙されないように、確認しなきゃね"。じゃ、今晩は頑張ってねー」
夏樹はやられた~と呟きながらも、なんだか楽しそうに笑う。もっと悔しがるかと思ったのに。
「大窪くん、帰ろう」
「うん。ちょっと待って」
大窪くんは、私から離れると、ツカツカと夏樹のほうへ向かって歩いていく。