潔癖症の彼は、キスができるのですか?



私は素早く大窪くんに駆け寄る。九の字に体を曲げて苦しそう。


「お、大窪くん、大丈夫⁉」

「み、水……」

「はい、琴音ちゃん。183円~」

「今それどころじゃないから帰って!」

「あ、そう? またね~」


本当の極上のドSだ。大窪くんが苦しんでいる姿をウットリとした表情で見て、夏樹は帰って行った。


「水飲み場まで歩ける⁉」

「うえ……出来ればミネラルウオーターが……いい」

「分かった! そこの自販機で買ってくるから!」


……て、私、今日お金持ってないじゃん!


「夏樹くん! やっぱりお金返し……」

「こ、これで。2本買ってきて……」


まだそう遠くまで行ってないだろう夏樹を追いかけようとしたけど、大窪くんが私の手に黒い財布を渡してくる。


「待ってて! 急いで買ってくる!」


潔癖症の大窪くんが、好きでもない、しかも男からキスをされたらあんな状態になるんだ。私はミネラルウオーターを2本買って、急いで大窪くんのもとへ戻る。そして、蓋をあけて手渡す。大窪くんは一気に水を口に含むと、何度も雑木林に水を吐き出す。2本目が空になっても、顔色は悪かった。


「少しは落ち着いた?」











< 78 / 99 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop