潔癖症の彼は、キスができるのですか?
翌朝。キッチンで味噌汁を作っているお母さんに声をかける。
「お母さん、歯が痛い。学校休んでいい?」
「口、開けて」
「あーん」
お母さんは私の口の中を見た後、ピンっとデコピンした。
「いったー!」
「仮病使うからよ。学校には行きなさい」
「け、仮病じゃないもん! 本当に歯が痛いんだもん」
「……琴音。仮病を使うなら、歯痛以外にしなさい。歯科医のお母さんに歯痛がするだなんて嘘は通用しないわよ。我が娘ながらおバカすぎるわ」
「だ、だって、歯痛で寝込む人だっているってお母さんが言ってたじゃない!」
「親不知を抜いたり、ひどい虫歯の時は、鎮痛剤が効かない患者さんもいるわよ。本当に痛いなら、お母さんのクリニックに来なさい。レントゲンまで撮ってみっちり検査してあげるから」
「……学校に行ってきます」
「よろしい」
……私は、やっぱりおバカなんでしょうか。お母さんにあっさり、仮病を見破られて、私は重い足取りで学校へ向かった。