潔癖症の彼は、キスができるのですか?
大窪くんは、私の涙を指で拭くと、ぎゅうっと抱きしめた。そして、大きなため息をつく。
「俺は嘘がつけない山口さんが好きだよ」
「……でも、心配させた。不安にさせた……」
「うん。でも、それは山口さんのせいじゃない。まだ、はっきりとした原因は分からないけど、俺に関係してるのは分かる。俺の性格が山口さんに相談できない状況をつくらせた。俺のせいだ。ごめん」
「違っ……」
顔をあげた瞬間、大窪くんの顔が近づく。……キスされる……。そう思ったのに。
頬をすり合わせ、大窪くんの吐息が私の耳にかかる。今まで経験したことのない感覚にゾクッと体が震えた。そんな私の反応が面白かったのか、大窪くんはクスリと笑う。
「キスされると思った?」
「お、大窪くん」
「キスしたいけど、あいつにされた後に山口さんにしたくないんだよね」
「そ、そういう事じゃなくて」
顔が赤くなる。ドキドキして体が熱くなる。大窪くんから離れようとしても、離してくれなくて。
「どうしたの?」
「み、耳元でしゃべらないでっ」
「え?」
やっと、体の自由を解放されて、右手で耳を押さえつけた。
「なんか……くすぐったい」