潔癖症の彼は、キスができるのですか?
「それ、色つきじゃん!」
「でも保湿性はバッチリだよ♪ 桃の香りがするの」
「いい。自分のリップで」
「どうせすぐマスクつけるからいいじゃない」
「そういう問題じゃなくて……」
あはは。いつも私をからかって笑っている大窪くんが、焦ってる。なんか楽しい。
「ほら! 本借りてきて。帰るよ」
「うん」
少ないけど、人がいる場所ではあまり大きな声出せないもんね。私は2冊本を借りて、大窪くんと図書室を出た。
「あのさ、今、山口さん、借りた本をカバンに入れたよね」
「入れたよ」
「教科書が一冊も入ってなかったけど」
「…………」
「…………」
「忘れてきた」