潔癖症の彼は、キスができるのですか?
リップのフタを取って、大窪くんに手を振り上げると、ガシッと両手首を掴まれて、いとも簡単に私の動きは止められた。それでも力で押しきろうと足を一歩出す。
「ごめんって。いつもの冗談じゃん」
ははッと爽やかに笑う大窪くんは、私の攻撃をまるで赤ちゃんをあやすかのよう。力の差は歴然ですね。そうですよね。
「もういい!!」
プイッと顔を背けて、自分の唇にリップを当てる。ほんのり桃の香りがして、急に桃のゼリーが食べたくなる。コンビニに寄って買って帰ろうかな。
「怒った?」
「怒ってるよ」
「どうしたら機嫌なおる?」
「……桃のゼリー食べたい」
「あ、偶然」
え?
不意に大窪くんを見上げると、耳にかけてあるヒモを手にかけて、マスクを取った。大窪くんのケアがよかったのか、思っていたより荒れてない。形のいい唇を見つめていると、右手を引かれて腰に手をまわされる。
驚く間もなく、チュッと唇が軽く触れた。