潔癖症の彼は、キスができるのですか?




「俺も食べたくなった」

「え……ええ!?」

「女の子がリップぬる仕草って、かわいいよね」


そんなものなのかな。狙ってやったわけじゃないけど、大窪くんがかわいいと感じてくれるなら嬉しい。でも今後、意識しちゃって、大窪くんの前ではリップはぬりにくいかも。


「……て、大窪くんも桃のゼリー食べたくなって、なんでキス?」

「桃の香りがしたから」

「じゃ、私のリップぬって食べる?」

「……まだ怒ってる?」

「違うよ~。キスより直接リップぬったほうが桃の香りが感じられるからだよ」



大真面目に言ってるのに、大窪くんは私の言葉を聞いて眉を下げて、クスリと笑った。


「本気で勧めてるんだね。ふたりきりだし、山口さんだけになら見られてもいいよ。じゃ、ぬってもらおうかな」

「いいよ」


大窪くんは私の椅子に腰かける。立ったままの私と同じ高さにある大窪くんの顔。改めて、身長差を感じる。大窪くんて大きいんだな……。


ピンクのリップ を大窪くんの唇に押し当てて右にひく。人にリップをぬるの初めてだから、なんか緊張しちゃう。
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