私達の思い出
小さい頃から、夢なんてなかった。ただこの島で幸せに暮らして、この島で生涯を終えたらいい…そう思っていた。

でも、そんなの甘かった。夕夏ちゃんは東京に行って弁護士に、光はおじさんの診療所を受け継ぐために医大へ…じゃあ、孝汰は?

孝汰も島を出るって言ってたけど…何で?

『はぁ…』

「ため息つくと、幸せ逃げるわよ」

『夕夏ちゃん…』

右隣から声がして、振り向く。そこには夕夏ちゃんが座っていた。

『ねぇ、夕夏ちゃん』

「ん?」

『夕夏ちゃんは…どうして弁護士になりたいの?』

ふと、思った疑問を夕夏ちゃんに聞いた。

「さぁ…どうしてかしらね。気付いたら、"弁護士になりたい"って思ってたわ」

『…』

夕夏ちゃんの横顔があまりにも綺麗で、思わず見惚れた。

ガラッ

「千尋っ!!」

『あ、光』

勢い良くドアが開く。ドアを閉め、光がこっちに向かってくる。

『おはよう、光。どうしたの?』

「どうしたの?じゃねぇよ!!お前ん家いったらいねぇし…おばさんに聞いたら、早くに出てったって言われるし…」
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