私達の思い出
この沈黙が、気まずい。ふと、孝汰を見る。孝汰はじっと私を見ていた。

「お前さ、朝言ってたろ?"みんな進路決まってていいなぁ"って」

『あ、うん…』

「俺…実は、まだ進路決まってないんだ」

『え?』

孝汰の言葉に、私はビックリする。てっきり、孝汰は島を出て大学行って、勉強するのかと思ってたから…

『そう…なんだ…』

「だからさ、千尋だけが悩んでるんじゃねぇって…言おうと思った。まだ春だから…最終的には、秋までには考えればいいかなって…」

いつもは口数が少ない孝汰。私のために、分かりやすくゆっくりと話す。

『じゃあ、何て書けばいいんだろう…』

「さぁな。そこら辺は自分で考えろよ。俺達は…まだ子供なんだから…」

孝汰の言葉が、心に響く。

『ありがとう、孝汰』

「お、おぅ…」



孝汰と別れ、私は職員室に来ていた。佐久間先生に進路の紙を渡す。

「…白紙?」

『私、まだ決まってません。でも…秋までに、決めますので、それまで待ってくれませんか?』

「…」

白紙の進路の紙と、私を見比べて先生はため息をついた。

「分かったよ。じゃあ、黒崎先生に言っておくな」

『はい、ありがとうございます』

失礼します、と言って職員室を出た。学校を出ると、外はすでに暗くなっていた。

「よぉっ!!」

『光…?』

校門を出ると、私服姿の光が立っていた。ジーンズに黄色い生地の半袖。

『何で光がここにいるの?』

「いちゃあ悪いかよ。一緒に帰ろうぜ」

『うん!!』

光と手を繋ぐ。私はこの温もりが大好き。孝汰とは違う、温もりー…

私達は2人並んで、山を下りた…
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