ライオンさんのペット
白い封筒を持つメイドさんの手の隙間から、右下に記された差出人の名前の一部が見えた。



『 綾部 敏 』



綾部?

もしかして…



「花音!」


二人で声のした方を向けば、小春さんが焦った様子で廊下を駆けてくる。


「その手紙は瑠唯様宛の物ではないわ。」


小春さんは私に向き直り、深々と頭を下げた。


「瑠唯様、申し訳ございません。」


私宛ではないと言われたが、小春さんは"嘘をついている"と直感で思った。



これは私宛の手紙だ。



『綾部敏』はきっと、お父さんとお母さんの会社で経理を担当していた"綾部敏雄"さん。



どうして隠すんですか?と問う前に体が動いていた。



「すみません!」



私はメイドさんから封筒を奪い、自分の部屋に入って鍵をかけた。


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