ライオンさんのペット
「こんなことして…迷惑だよね…」


今頃、屋敷の人達探してるかな?


衝動的に家を飛び出したけれど、時間が経って落ち着いてみれば、和雅さんに浮かんだ疑問なんてそれほど重要ではないと思えてきた。

だって、私にとってお父さんとお母さんが無事でいることが、何よりも大事なことなんだから。



もう、帰らないと。



そう、思うのに、ベンチから腰を上げられない。


もう少し、もう少しだけ休んだら帰ろう。


落ち着いたけれど、気持ちはまだ重いのだ。


視線を落とした足元に、一片の花びらが風に乗ってふわりと落ちた。


見上げれば、満開の桜の枝が揺れている。



『瑠唯ー』



「お兄ちゃん…」



昔、お兄ちゃんとした約束を思い出す。



『迷子になったら、そこから動くんじゃないよ。
必ずお兄ちゃんが瑠唯を見つけてあげるから。』



「お兄ちゃん…どうしてるかな…」

ベンチに膝を抱え、その膝に頭を乗せて目を瞑った。


< 125 / 132 >

この作品をシェア

pagetop